ヴァイオリンカフェ

ヴァイオリンという楽器について、主にその誕生について調べています。

誰が最初にヴァイオリンをつくったのか?

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最初にヴァイオリンを作ったのは誰?

どうやってヴァイオリンは誕生したの?

    答えを見つけようと、私は「何か判りそう」「関係ありそう」と思う本や資料を集めてきました。

    今日からは改めてそれを見なおして、解っていることを確認し、不明なことや疑問に思うことを整理していこうと思います。この作業をきっかけにヴァイオリン好きな方々と情報交換、意見交換ができたら嬉しいです。

 

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ヴァイオリン誕生の秘密にせまる3冊+1 (その4)

プラス1といっても オマケではありません、ボリュームも信頼度も抜群の音楽事典

 

ニューグローヴ世界音楽大事典

日本語版 監修 柴田南雄/遠山一行

講談社(文献社)より出版

 

おすすめの本に事典を入れるのは、ちょっと反則のような気もしますが、どうしても紹介したかったのでプラス1としました。

全21巻、 別巻2巻、作曲家年表1、の大型本です。

本当におすすめなので、ぜひ図書館で使ってみてください。たとえば好きな楽器について、たとえば気になっている国の音楽について。知りたいことの殆どか、もしかしたら知りたい以上のことが見つかると思います。日本語なのでナナメ読みや拾い読みも出来ます。署名記事で参考文献一覧もあります。オリジナルは英語。

 

どんな感じかフィドルの項を例にご紹介します。

見出しはカタカナで「フィドル」、続いてヨーロッパ各国語での記載があります。fiddle とか fedyleとか、英語でも6通り、他にドイツ語、フランス語、ラテン語、ノルウェー語、スペイン語、全部で17通り。これだけあるのは特別かもしれません。

次に、「フィドル」についての概要と資料に関する解説、以降の記述を読むにあたっての前置きです。

そして、点線に囲まれた目次があり、本文が始まります。1. 命名法、2. 構造、3. 調弦、4. 弓、5. 演奏の姿勢、6. 歴史的発達、7. 職業フィドル奏者、8. 典礼および劇中での使用、9. 祝宴と舞踊、10. レパートリー。

見出しから本文の終わりまで5枚の画像含めて4ページ以上あります。3段組で活字も小さめなのでなかなかの量です。

ある程度、知っている項目を引いてみれば、この事典のスタイルや詳しさの度合いが解ると思います。

 

日本語で読めるのが嬉しかったのですが、ひとつとまどったことがありました。

ヴァイオリン製作者としては、とても有名な一族 「Guarneri」 を引こうとした時のことです。ストラディヴァリと並んで有名な通称「デル・ジェス」もこの一族です。

はて、カタカナ表記どうなるんだろう。日本語訛り?だとガルネリに近いけれど、これはないでしょう。えーと、ローマ字読み風にグァルネリでいいかな。あれ、無い。そう書いてあるの、見たことあると思うけどな。無いとは思うけどガルネリも見てみようか。やっぱり無いか。まさか、見出し語に無いとか?そんな筈ない。それはない。アマティもストラド(ストラディヴァリ )もあってGuarneri がないわけない。なんで? 見落としした?もう一回グァルネリみてみよう。うーん、無い、無い、無い!

で、どうしたかと言いますと。

索引です。五十音順の事典の最後の第21巻、索引。ここ21巻には和文索引(五十音順)、欧文索引(アルファベット順)、音楽用語一覧が載っています。この欧文索引でGuaruneriを探しました。 

Guarneri、Guarneri、、、おっGuadegnini、、今はこれじゃない、もっとあと、もっとあと。あ、有った!やっぱり有った!無い筈ないと思ったけど。「グヮルネリ」だって。今どき外国語とはいえ小文字「ヮ」を使うのか。気がつかなかった、、、

 

もし、日本語表記がビミョーで原語のスペルがわかっているなら、欧文索引を使う方が早いかもしれません。一般的には有名でなく、特に原語が英語でない人名などは複数の日本語表記があり得るので。

実際、日本語の本では、ガルネリも、グァルネリも、グヮルネリもありました。今手元にある本ではグァルネリ表記が多かったのですが、イタリア語からの翻訳本ではグヮルネリでした。もともと別の言語を無理に日本語表記にしているのですから、仕方ありませんね。

 

和文索引では、見出し語のページだけでなく、他の項目で言及されている箇所も出てきます。表記が分かっていても、項目によっては索引を使う価値があるかもしれません。索引、大いに活用しましょう! 

ヴァイオリン誕生の秘密にせまる3冊+1 (その3)

ヴァイオリンとフィドルとどう違うの?

 

フィドルの本 あるいは縁の下のヴァイオリン弾き

茂木 健

音楽之友社  初めて音楽と出会う本

 

「フィドルとヴァイオリンはどう違うのか」。年に数回だが、こう質問されることがある。「使われている楽器には何の違いもないけれど、奏法が少し異なってます」と答えてから、「素面で演奏するのがヴァイオリンで、酔っ払って演奏しても一向にかまわないのがフィドル」と補足すると、たいがいの人が、なるほどといった顔をしてくれるので、おのずと答えも紋切り型となってしまった。ふと考えてみる。なぜ、こんな答えで納得してもらえるのだろう? (はじめに より  本書2ページ)

 

ヴァイオリンとフィドルは同じ楽器とは知っていましたが、引用部分を読んで私も「たいがいの人」の反応をしてしまいました。最大公約数的なイメージなのでしょう。

もっともヴァイオリンも誕生のころは、貴族や高貴な方々が嗜みとして弾くリュートやヴィオールと比べられて、音色が硬い、音が大きすぎる、卑しい楽器、楽師の楽器と思われ見下されていたようなのですが。

 

中世には、やはりフィドルと呼ばれる弓奏の民俗楽器がありました。著者はフィドル=ヴァイオリンとなる前の各種の民俗フィドルを混同しないよう「祖型フィドル」としています。その後、16世紀前半にヴァイオリンが登場、民衆はこの新しい楽器に飛びつきます。そして、それまで楽しんできた楽器と同じ名で呼ぶようになったのではないかと著者は考えました。

 

フィドル=ヴァイオリンは世界各地の民衆音楽に取り入れられていきました。

著者は地域を分けて各地のフィドル音楽を紹介しながら、それに絡めてヴァイオリン/フィドルの二極分化、ジプシーの音楽やクレズマーとの関わり、新世界でのフィドルの受容と変遷などを考察しています。

民俗音楽ファンなら、きっとどこかの章で、もしかしたら全部の章で、ワクワクドキドキが体験できることでしょう! 巻末にはディスコグラフィーもついています。

 

ディスコグラフィーで思い出しました。私にとってCDのライナーノートはとても楽しみで貴重な資料でした。特にクラシックやワールドミュージックのそれは充実したものが多く、楽曲や演奏者について詳しく書かれていたり、歌詞に対訳までついていたり。ヴァイオリニストの使用楽器(もちろんヴァイオリンですね、製作者名と製作年が示されます)が記されていることも。

 

横道に逸れてしまいました。「フィドルの本」に戻りましょう。

ヴァイオリン誕生について考えるにあたって興味深かったのは、ペンギン歴史的俗語辞典(The Penguin Dictionary of Historical Slang )を参照してフィドルの語義の変化を見るところです。

フィドルという言葉の意味やこの語を含む言い回しのイメージが変化していったことから、この楽器を取り巻く状況やその変化を推測しています。

これは他所ではみられないアプローチかなと思いました。

 

フィドルが好きな人も、ヴァイオリンが好きな人も、きっと楽しめる1冊です。

ヴァイオリン誕生の秘密にせまる3冊+1 (その2)

 ヴァイオリン製作とドイツの製作者に関心のある方はぜひ!

 

「ヴァイオリン」

無量塔 藏六著

岩波新書 E58

 

著者はドイツでヴァイオリン製作を学び日本人として初めてマイスターになりました。

ドイツでマイスターというのは国家資格で、その道の名人や巨匠に対する単なる尊称ではありません。英語ならマスター、イタリア語ならマエストロですが、日本語になるとそれぞれニュアンスや使いどころが違ってしまいますね。

ドイツではこの資格がないと自分の店を持ったり弟子をとったり出来ないそうです。

 

この本で著者は、製作者としてヴァイオリンの構造や材料、製作について自身の経験なども交えて解説や考察をしています。「ヴァイオリンに用いられる材木 (1) 」「力木と魂柱」「装飾細工の話」「ワニスについて」などなど。

これを読んでヴァイオリン製作に関心を持ったり、製作家を志したりした人は少なからずありそうです。

 

ただ、それだけではありません。

 製作関連の内容ばかりではなく「名匠の遺跡をたずねて」「四弦による五度調弦楽器の開眼」「ヴァイオリンの製作地」「ミッテンワルド」「マイスター制度」「日本のヴァイオリン制作史」など興味深い章が並んでいます。この辺りの内容は他のヴァイオリン関連の書籍ではあまり見られないものではないでしょうか。

 

著者はあとがきで自身が「〜ドイツびいきになっていると思います。その点、お許し願いたいと思います。」としていますが、ヴァイオリンやその製作者製作地についての記述は ( 少なくとも日本語で読めるものに関しては ) イタリア中心であることが多いので、ドイツ語圏の情報は貴重です。

ヴァイオリンの誕生がイタリアだとしても、弦楽器製作の歴史においてドイツは重要です。初めて弦楽器製作者のギルドが出来たのもドイツです。ヴァイオリン誕生前夜のこと、誕生の背景を考えるにあたってアルプス以北の地域のことを抜きにはできないと思います。

ドイツびいき、ありがとうございます!と言いたい1冊です。

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ヴァイオリン誕生の秘密にせまる3冊 + 1 (その1)

 

 古い本だと敬遠しないで‼︎

「ヴァイオリン」

マルク・パンシェルル   大久保和郎訳

文庫クセジュ411 白水社

 

    ヴァイオリンは十六世紀の発明である。といっても、もちろん完全な発明ではなく、はるかな太古にはじまる一つの発展の帰結のなのであるが。 この発展は中世を通じてますますはっきりした形を取り、促進される。ルネサンス時代には様々なタイプの弓奏楽器が共存するが、そのそれぞれの特徴が一五〇〇〜一五二〇年ごろ融合されて、おおよそ今日われわれが知っているようなヴァイオリンというものを生むのである。( 本文7ページ )

 

冒頭からいきなりの結論。最初に読んだときは何となく読み流してしまったんですけどね。

ただもうちょっと詳しく具体的に知りたいと思うわけです。

はるか太古の南アジアの民俗楽器の話やら、ルネサンス時代の多様な弓奏楽器の話やらではなくて、今私たちが知っている楽器としてのヴァイオリンを誰が作ったのか いつ作ったのか どこで作ったのか というのが知りたい!

 

同じことを考えた人は少なからずいて、著者のパンシェルル先生が紹介しているようにヴァイオリンの起源については色々なアプローチで研究考察されてきました。

資料になるのは、古い時代に描かれた絵画であったり楽器の図鑑であったり、或いは古文書であったり。 

こうしたヴァイオリンについての過去の研究や初期の製作者たちに関するあれやこれや、ちょっとどうよ?と思うようなものまでも紹介しながら、著者は慎重な姿勢をくずしません。

本当の歴史がはじまるのはイタリアだとして、クレモナとブレシアふたつの地名をあげているのに、どちらが先とは明言しないのです。しないというより証拠不十分で明言できなかったのでしょうが、安易に結論づけようとしないところが学者らしいなぁと思います。

 

楽器誕生については冒頭で引用した文章に全てが集約されています。

さらに、もっと多くのページを割いている技術や音楽形式や奏者の話の中にもヴァイオリン誕生について調べていくためのヒントがたくさん出てきます。本当に情報量の多い著作です。

 

ちょっと古くて今風でない翻訳が微妙なところもあるけれど超オススメの1冊