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ヴァイオリン誕生の秘密にせまる3冊 + 1 (その1)
古い本だと敬遠しないで‼︎
「ヴァイオリン」
マルク・パンシェルル 大久保和郎訳
文庫クセジュ411 白水社
ヴァイオリンは十六世紀の発明である。といっても、もちろん完全な発明ではなく、はるかな太古にはじまる一つの発展の帰結のなのであるが。 この発展は中世を通じてますますはっきりした形を取り、促進される。ルネサンス時代には様々なタイプの弓奏楽器が共存するが、そのそれぞれの特徴が一五〇〇〜一五二〇年ごろ融合されて、おおよそ今日われわれが知っているようなヴァイオリンというものを生むのである。( 本文7ページ )
冒頭からいきなりの結論。最初に読んだときは何となく読み流してしまったんですけどね。
ただもうちょっと詳しく具体的に知りたいと思うわけです。
はるか太古の南アジアの民俗楽器の話やら、ルネサンス時代の多様な弓奏楽器の話やらではなくて、今私たちが知っている楽器としてのヴァイオリンを誰が作ったのか いつ作ったのか どこで作ったのか というのが知りたい!
同じことを考えた人は少なからずいて、著者のパンシェルル先生が紹介しているようにヴァイオリンの起源については色々なアプローチで研究考察されてきました。
資料になるのは、古い時代に描かれた絵画であったり楽器の図鑑であったり、或いは古文書であったり。
こうしたヴァイオリンについての過去の研究や初期の製作者たちに関するあれやこれや、ちょっとどうよ?と思うようなものまでも紹介しながら、著者は慎重な姿勢をくずしません。
本当の歴史がはじまるのはイタリアだとして、クレモナとブレシアふたつの地名をあげているのに、どちらが先とは明言しないのです。しないというより証拠不十分で明言できなかったのでしょうが、安易に結論づけようとしないところが学者らしいなぁと思います。
楽器誕生については冒頭で引用した文章に全てが集約されています。
さらに、もっと多くのページを割いている技術や音楽形式や奏者の話の中にもヴァイオリン誕生について調べていくためのヒントがたくさん出てきます。本当に情報量の多い著作です。
ちょっと古くて今風でない翻訳が微妙なところもあるけれど超オススメの1冊。